Fusion Wetsuits 5/3、4/3、3/2mmの役割を徹底体験

悩めるウェットスーツの厚みチョイス。

フュージョンを同日に同じ場所で徹底体験し5/3mm、4/3mm、3/2mmそれぞれの役割を解明

FUSION 裏起毛

裏起毛に出会うまで

ついこの数年前まで私にとって冬用ウェットスーツの厚みと言えば5/3mmしか頭になかった。

1990年代、サーフィンを始めた私の最初のウェットスーツはボディー5㎜、肩回り3㎜の一般的に言われるゴーサンのウェットスーツで外部は上半身ラバー。内部はジャージ素材。

仕事前の早朝、千葉のサンライズ辺りで多く入水していた私は、板の感覚を直に感じたくブーツは着用せず、パドル時の違和感、板をプッシュして立ち上がる時に感じられる手のごわつき感が嫌でグローブも着用せず、さらに見かけが悪い、耳がふさがることによるバランスが不安定になるという個人的な思いからキャップも着用せず。

“冬のサーフィンでサーフィンの上達に大差が出る”と昔から耳にしていたが、競技目的で続けているだけではなく、ただ自然と戯れること、サーチすることが大好きな私は若さと気合で冬を乗り切っていた。

1990年代後半になると、ジャージがメインだったウェットスーツ素材に色々な画期的な素材が現れ始めたように思われる。

内部銀色に渋く光るチタンメタルを採用したSCS(スーパーコンポジットスキン)素材は水を保有せず2ラウンド目も楽々、そして脱着がスムーズ。熱伝導が低いため体温が奪われにくいという画期的なものだった。しかし水を受け付けないためウェットスーツ内部に溜まる水や汗によりパドル時に胸元が滑るなどのコメントが多くあったように思われる。それを解決するためにSCSにメッシュ線を付け、そのくぼみ部分に水分を入れ胸との接地面はドライにするものも現れた。

そして2000年頃になると、今まで内部はほぼ黒しか見受けられなかったウェットスーツにとって、カラフルな黄色、赤、紫などの裏起毛素材を採用した生地が沢山見受けられるようになった。文字通り、毛が起きている素材はポリエステル中空糸を使っているパターンが多く、肌とラバーの間に起毛により空気の層を作り水と身体の接地面をなくし、暖かく、速乾、脱着しやすいなど冬のサーフィン事情を大きく変えることになったと思っている。

2024年現在、裏起毛素材は冬のサーフィンには欠かせない主流の生地でさらに日進月歩の発展を続けており、起毛素材にチタンを織り込むなど色々な開発が今も続いている。

リップカール裏起毛改革

1969年、サーフボードメーカーとして発足したリップカールは1970年に今では世界中で多くのファンを魅了するウェットスーツを生産し始めた。
自らがサーファーで、冬の南極からベルズビーチに届くハイクオリティーの波をサーチし楽しみつづけられるべく作り上げられたウェットスーツは瞬く間に世界でも脚光を浴び、今に至っている。

2000年頃。私はリップカールオーストラリア、フランスのウェットスーツR&D担当と共に生地生産工場やウェットスーツ生産工場を訪問し、日本で流行し始めていた裏起毛を紹介した。日本ではこれが流行っている。これを世界でもやらなければならない、と私は訴えた。その頃、日本は世界でもハイテクな国として君臨しており、アイディアも奇抜なものが多く、この裏起毛のコンセプトを伝えた時、彼らは驚きの顔をしていた。

工場見学が終わり成田に送る途中に成田山を訪問した時だった。境内に入る時靴を脱ぎカーペットを歩き出した時に、一人が熱い!熱い!と笑っていたのを鮮明に覚えている。裏起毛のコンセプトはギミックだと思われていたようであった。私は裏起毛の特性と機能、実力を伝え切れなかったと残念でならなかった。

そこから数年後。その一件を忘れかけていた私は新商品のリストを見た時に震撼させられた。リップカールがピンク色の裏起毛ウェットスーツを始めたのである。実は数年にわたり、R&Dチームは裏起毛の素材、生地、ネオプレン、表ジャージ、そして一番大事なその張り合わせのバランスを、世界中から集めた情報とサンプルによりサンプルを作りテストを水面下で進めていたのであった。


フュージョン メディーナ

Fusion登場

リップカールのグローバルR&Dチームが日本を含め寄せ集めた情報と素材。国や歴史への忖度は一切なし。サーチし続ける私たち、そしてお客様にとって、何が一番良いウェットスーツかを求め続け、ついに2023年4月、ベルズビーチにてWCT選手が一斉に新商品Fusion3/2㎜を着用したのである。全身黒の夏用E7と同じカッティングのジップフリー。外部は全身ジャージ素材で包まれ、胸には長年の歴史とプライドが詰まる赤いウェットスーツ丸ロゴが渋く映える。胸下には同色赤のピンライン、そしてまた同色で手元、足元にはFusionのロゴ。リップカールファンにはウゥと唸らせるそのシンプルでカッコいい、かつ実用的なウェットスーツが世界に向けて発信された日である。

2023年4月にデビューしたFusionの商品が私たちの手元に届いたのが初夏。千葉、湘南にて入水テストを行ったが、とても熱くテストと言えるほどの体感は説明しにくかったが、その時点でも間違いなく言えたのがずば抜けた軽さ、伸縮性、速乾性、暖かさ、そして取り扱いやすい全身内外ジャージに感動させられた。

テスト時期は11月から。入水テストさせていただいた場所は主に千葉は片貝、一宮、志田、東浪見、マルキ、鵠沼、そして2024年2月10日、11日には同日同天気、伊豆は下田で同じコンディションにおいて3/2㎜、4/3㎜、5/3㎜を一斉に着用。色々な体験を元に今回のレポートが完成した。注:暖かさの感じ方には個人差があるので参考までとしてください。

 

フュージョン 3/2mm

贅沢品Fusion3/2㎜裏起毛

私にとって正直、裏起毛3/2㎜のデビューは斬新であった。文頭にも書いたが、私にとって冬用ウェットスーツは裏起毛5/3㎜。夏は3/2㎜の表裏ジャージフルスーツ。この3/2㎜裏起毛のポジショニングがどこに当てはまるのかが想像できなかったのである。ただ、2023年11月下旬、雪の降りしきる韓国のウェイブプールで松岡アノン選手がFusionの旧モデルヒートシーカー3/2㎜裏起毛を着用して参戦していて、十分だったと聞き、半信半疑ではあったもののついにその時代は来ているのかと興味はとてもあった。

軽さ

まずFusion3/2㎜を乾燥した状態で持った時の軽さは、だれもが「あれ?なんだこれ?」と感じるのではないだろうか。今まで片手で持った時ずっしりと感じていた裏起毛だが、ジャージ3/2㎜と変わらない程の軽さである。また、軽いため5/3㎜のような重い着用感がない。

伸縮性

伸縮性はまさに未開の地。裏起毛?と思えるほど伸びる。海で知り合った方の某ブランド3/2㎜ジャージと伸び比べをしたが、Fusionはその2倍程度の伸びがあった。まさにジャージ素材に勝るとも劣らない伸縮性を持つ。それをタイトに着用することによりウェットスーツが身体にフィットし、動きやすさ抜群。

速乾性

入水後、洗わず裏返しハンガーに掛け干したのだが水抜けがとても速い。掛けたとたんに水が多少流れ落ちるのだが、そもそもそこまで素材が水を保有しないのがわかる。30分後には腕先、足先を除いた全体の90%がティッシュで押さえても水が付かないほど乾燥する。朝サーフが終わって一休み、そして2ラウンド目でもメインボディーに寒さを感じさせず、手先足先以外濡れていないので着用がしやすい。また、濡れている所が少し暗めのピンクになり、他は明るいピンク色なのだが、胸元はちょうど谷間の部分が少し点状にくらいピンクになっていたのは私の汗。それほど水を持たないので、入水後暖かいシャワーを浴びない方が乾燥していて暖かく、タオルは手先足先しか必要ない状態である。

暖かさ

昨今のジャージの暖かさもあり、千葉、湘南で着用し始めたのは12月初旬であったが熱さを感じる。

2024年2月中中頃伊豆は下田で気温10度、海水15度、晴れ。ローカルショップ白浜マリーナ様とも3/2㎜でも行けるのではないかと話し合いテスト入水。ブーツ、グローブありで波は本数が多いわけではないが腰、腹波が数本入ってくる程度で動き回っていたわけではないのだが快適にサーフィンができているのに驚きを感じた。本当に寒くないのかと色々と身体をよじらせたり伸びたり、股を大きく開いたりと動いたのだが寒くはなかった。ただし、もしかすると寒いかもしれないという不安感は多少あり、1時間を過ぎたころに少し寒さを多少感じた様に思えた。

結果

贅沢な一品。サーフィンギアは充実させたいという人はジャージ3/2㎜と同時にFusion3/2㎜もそろえておくと寒さによってどちらかを選ぶことができる。

夏が終わればジャージ3/2㎜フルスーツに変わっていくが、寒がりであればスプリングから裏起毛3/2㎜もオプションとして入れても良いかもしれない。ブーツグローブを着用すれば湘南では12月下旬まで着ることができた。

また冬の伊豆、四国、宮崎などで気温も水温も暖かい日であれば1時間程度海入水する人には動きも良く暖かいと体感したのでとても良いチョイスだと思われる。

また、大会出場選手であれば、少しでもウェットスーツの厚みからくる疲労は軽減したい所。動き回る冬の大会であれば20分から30分ヒートに使うのに適していると思われるが、真冬でブーツ、グローブをつけたくないのであれば4/3㎜や5/3㎜をお勧めする。

▷FUSION 3/2mm セミドライ ウェットスーツ 商品ページ

 

フュージョン 4/3mm

主流になるか!?Fusion4/3㎜裏起毛

5/3㎜を取り扱うことには全くためらいを感じたことがない私。今まで手を出してこなかった4/3㎜。ただ、新素材を使用し暖かく伸縮性のあるFusionの4/3㎜の世界を味わいたい!と興味が沸いた。

悩んだ末、Fusion4/3㎜を日本でも取り扱うか否かを、あるウェットスーツバイヤー様に相談させていただいた。5/3㎜が主流の冬用ウェットスーツ文化において、4/3㎜は中途半端な厚みで、利用者も暖かいのか、暖かくないのかわからず需要がないのではないかと。時を待たずして即答が返ってきた。実はその方、この数年湘南で4/3㎜を着用して冬を越していて、周りも5/3㎜から4/3㎜に変更する人が増加してきていると聞いた。

たしかに、私も数年前に千葉北の海で出会ったリップカール4/3㎜着用者に話を聞いてみると暖かさは十分と聞いたことを思い出した。その時は寒さを感じない人なのであろうと聞き流していたのかもしれない。

5/3㎜裏起毛信者の私にとって、不安が大きくあったが今回テストしたことにより、この実力に驚かされた。

軽さ

そのままだが、Fusion3/2㎜よりは多少重いが、5/3㎜よりは明らかに軽く、ごわつき感がそこまでなく扱いやすさがある。

伸縮性

4/3㎜は着やすく、3/2㎜に比べ暖かさに安心感がある厚みなのだが、まだ5/3㎜の感覚から抜け出せていないからか、着用後の伸縮性は裏切られたように伸びまくる。3/2㎜の伸縮性にはかなわないが、5/3㎜のごわつき感からは解放されたような感覚を覚えた。

速乾性

こちらも3/2㎜と同じ素材であり、ポリエステル中空糸は水を保有せず、水抜けが良いため、2ラウンド目も苦ではない。

暖かさ

鵠沼海岸の仕事前朝サーフ。富士山はすっかり雪化粧の中、気温0度。5/3㎜の誘惑があるのだが、ここはサーチしなくてはと4/3㎜グローブ、ブーツ、ヘッドキャップのフル装備で出動。

自転車の3分程度の移動はウインドブレーカーを外に着用していたが、ブーツ3㎜とグローブ2㎜の指先は寒さを感じていた。いざ海に着いた時には汗をかいている私がいた。熱い。

錯覚かと思いながら入水するが寒さが伝わってこない。こんな世界があったのかと興奮を覚えた。朝の1時間程度のサーフだが寒さを感じずにサーフィンすることができた。しかし、ブーツ、グローブ、ヘッドキャップは着用しなければ冬を越すのは無理だと感じた。

12月後半の寒波が来た日の千葉一宮でも4/3㎜のフル装備で問題はなく、2月の下田での着比べで感じたのは3/2㎜にブーツ、グローブで1時間サーフできたのだが、4/3㎜ではブーツ、グローブなしで2時間サーフィン可能でまだまだいける暖かさがあった。

結果

湘南、千葉、四国、宮崎エリアで4/3㎜のフル装備、ブーツ、グローブ、ヘッドキャップがあり、動き回る人であれば冬を越すことができる人もいるであろう。私もその一人になった。ブーツ、グローブ、ヘッドキャップが必要なくなった時にも使用し続ける時期が長いので、今後の3/2㎜ジャージとの付き合い方も変わってくると感じた。水温も外気も暖かくなってきている昨今、もっと流行ると感じる一品である。

▷FUSION 4/3mm セミドライ ウェットスーツ 商品ページ

 

フュージョン 5/3mm

安心感抜群!Fusion5/3㎜裏起毛

今まではE7ヒートシーカー5/3㎜に頼っていただけに、Fusion5/3㎜を着用し比べることがとても楽しみで仕方がなかった私。

過去に千葉北でサーフィンをさせていただくことが多い私にとって、Fusionでなければ他を比べる事すら頭に浮かばなかったであろう。どこまで進化しているのだろうか、何を感じるのであろうか。そしてその価値はどこにあるのかを探すべくテストを開始した。

テストは容易に始まる。5/3㎜は暖かいという安心感があるので、朝イチ寒いな!と思う日でも迷いなく着用できる。また、サーフ時の体感以外に朝自転車でサーフィンに向かう5分あるかないかの時間にどう感じるかも体感してきた。

軽さ

今までの5/3㎜では感じられない程の軽さ。使用後バケツに入れて持ち運ぶ時も最初は「あれ?!5/3㎜?」と思うほど重さが違う。海外からのウェットは厚みが薄いといわれる時があるが、国産と比べても厚みはしっかり5/3㎜、同じである。

伸縮性

今までの5/3㎜よりも裏起毛素材が伸びるので脱着がしやすくなったと感じる。腕にかかる3㎜は4/3㎜と同じでパドル時も引っ張られている感はないので疲れが出にくい。下半身は5㎜のごわつき感は多少感じるが、ヒートシーカーよりも伸びが良くなっているのを体感し、いざ波に立った時にはウェットスーツの厚みによるパフォーマンスの影響は感じられなかった。5/3㎜で動きがいいなら暖かさに安心感を求めたい!という方には吉報である。

速乾性

水はけの速さは3/2㎜、4/3㎜と変わらず速いので入水後も軽い。着用後も軽いのでサーフィン時もパフォーマンスに影響をあたえないであろう。お昼1時間ほど食事した後も手先足先以外はドライな感覚なので、2ラウンド目も始めやすい。

暖かさ

5/3㎜は暖かく、そして熱かった!2月の伊豆ではブーツ、グローブ、ヘッドギア無しで熱いと感じた。真冬の千葉の朝イチサーフではブーツ、グローブ、ヘッドギアを着用するが熱いと感じている。しかし風が強い日もあり、ヘッドギアに慣れてしまうとこのセットは外しにくい。風が無く、昼太陽が出ている時はヘッドギア無しで解放感も暖かさもバッチリであった。
湘南の朝イチサーフに行く時に自転車を使う私にとって5/3㎜は一番最初に手に取りたい一着であるが、5分後海に到着した時点で額や体に汗が出ている程である。強い寒気の風がある朝はウインドブレーカーは着用しているが同じように暑さを感じた。一番重要な入水時での感覚は、どれだけ波の本数が少なくとも2時間暖かさは変わることなく安心してサーフィンを楽しむことができる。風が強く波待ちが多い人、長時間サーフィンする人、風が強い場所で入水する人、寒がりな人には持ってこいの一品である。

結果

ここまで5/3㎜は伸縮性が高く、暖かさで進化したのだと驚かされた。Fusionは伸縮性が高いので動きも良く疲労がたまりにくいうえ、保温性も高いので長時間入水する方や波待ちが長い方にも適している。

朝イチサーフをする方や、自転車で海に向かう方、寒さに弱いと思われる方、暖かさへの安心感を求める方や風が強く吹くエリアでサーフィンをする人には最強のウェットスーツである。

メンタル的にも寒い朝、サーフィンに行く時、長年5/3㎜を着用している私にとっては慣れもあり一番最初に手に取りたい一着である。熱いぐらいでちょうど良いと思う場合はコレ!

▷FUSION 5/3mm セミドライ ウェットスーツ 商品ページ

 

フュージョン 5/3mmと4/3mm

【総評】

入水場所の水温、気温、風、個人の感じ方によってどの厚みが良いかは変わるが、新たにマーケットに出てきたFusion3/2㎜裏起毛は冬の大会などのコンプ使用、もしくは春秋の朝一サーファーに持ってこいと思われる。4/3㎜は新たな世界を見せてくれた。動きやすさ、暖かさにおいてこれからシェアをどんどん伸ばしていくと感じている。寒さ対策に安心感がある5/3㎜は引き続き寒さに敏感な人を暖かさだけでなく、伸縮性向上により動きの良さでサポートし続けるであろう。

金銭的に余裕があるのであれば5/3㎜、4/3㎜を両方使用していただき、安心感もありながら、新世界を味わっていただきたい。後に4/3㎜に移行する人もいるであろう。

大会に出るようなコンプレベルの方には練習では5/3㎜、4/3㎜を。そして30分などのショートなヒートでは3/2㎜を着用し大暴れしていただきたい。

リップカールは、これからも究極のギアをサーチし続ける。

The Search

 注:暖かさ、伸縮性など、個人の感じ方、場所、時と場合によって大きく変わりますので、あくまでも一個人の意見として参考にしてください。

 

FUSION セミドライ ウェットスーツ一覧 

 

FUSION セミドライ ウェットロゴ